中高年期(およそ7歳以上)を過ぎた主に猫ちゃんたちの約70%で慢性腎機能低下症が見られるというデータがあります。
勿論ワンちゃん達にも起きる病気です。
腎臓は体内に左右2個ある臓器です。食べ物を消化した後に出る老廃物を多く含んだ血液を集めて、汚れとキレイな血液に仕分け、汚れはオシッコとして体外へ、キレイになった血液は全身循環へ戻すという大事な仕事をしています。
腎臓はとても頑張り屋な臓器なので、様子がおかしくなってきた時には腎臓の能力の75%(❗️)がダメになっている事がよくあります。2個あるうちの一個が丸ごと無くなってもまだまだ外からは異常が見られないのです。
1個の腎臓には初めは約20万個ものネフロンと呼ばれる器官があり、血液をキレイにするいわばろ過装置として働いています。これらは一度壊れると再生・補充されないのでどんどん減ってきます。残ったネフロンは、目減りした分も働かないといけないので、負担が増え、さらに壊れるネフロンが増えます。
まず初めに飼い主さんが気付くのは恐らく、『最近うちの子たくさんお水を飲むからおしっこばっかりする、とか、お漏らしをすることが増えた。でもうっすいオシッコだからあんまり匂わないから助かるのよね~』という会話をする頃ではないでしょうか?じつはそのころにはすでに腎臓の機能は残り33%以下(!)といわれます。尿検査をすると尿の中にタンパク質が多く含まれていたり、水に近い比重になっていたりという異常を示します。でも一般の血液検査で腎臓の指標とされる尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Cre)はまだまだ正常値範囲内です。
この時体の中では腎臓が効率よく血液の汚れを仕分けできなくなっていて、たくさんの水分が汚れと共に体外へ排出されます。これが薄くてあまり匂いのしない大量のオシッコの正体です。そのためキレイになって体内循環に戻る水分が減って脱水気味になるため頑張って水を飲むのです。多飲多尿ではなく多尿多飲なのです。そこまでしても汚れは体に残り溜まっていき、体が弱ってきます。
さらに進むといよいよ血液検査でBUNとCreが正常値範囲を超えてきます。この時点で腎臓の機能は残り25%を下回っています。食欲が減ってきたり、元気がなく毛並みが悪く痩せてきた、水ばっかり飲んでいるせいかよく吐く、という主訴来られる飼い主さんが多いのもこの時期です。
腎臓はもちろんオシッコを作り、血液をキレイにしてくれるのですが、それ以外にエリスロポエチンという赤血球を作る命令を出すホルモンを分泌していたり、カルシトリオールというホルモンを出していたり、血圧のコントロールの一端を担っていたりと色々な仕事をしているので、貧血になったり、骨が脆くなったり、高血圧になったり、と様々な悪い症状が出てきます。
まずは日常生活の中で、食欲やお水を飲む量に注意を払っておいてください。また、こまめに写真を撮ってあげておくと、体型や毛並みの変化にも気付きやすいかもしれません。
また、従来の検査項目(BUN,Cre)以外にSDMA,FGF23やシスタチンCなどを調べる事でより早期の段階で腎機能低下を発見できる様になってきました。様子がおかしくなってから検査を受けるのではなく、1年に一回は健康診断を受けられるのはとても良い事と考えています。
慢性腎機能低下を直接防ぐ手立てではありませんが、若いうちから、ドライフードだけを与えるのではなく、1日に必要な栄養の30%位を缶詰や袋入りのウェットフード(総合栄養食が望ましい)にする事で水分を摂取させておくというのも、特に猫ちゃんには有効な方法と思われます。